「ヒア アフター」 [★★★★]
原題: HEREAFTER
監督: クリント・イーストウッド
脚本: ピーター・モーガン
出演: マット・デイモン/セシル・ドゥ・フランス/フランキー・マクラレン/ジョージ・マクラレン/ジェイ・モーア/ティエリー・ヌーヴィック
2010年/アメリカ映画
★★★★
<感想>
クリント・イーストウッド監督ものということで鑑賞。
やっぱり、何か好きだ。
東南アジアにバカンスに来ているフランス人女性ジャーナリスト、マリーが津波に巻き込まれ、死後の世界をさまようところから物語が始まる。
次はアメリカに住むジョージの話。
彼は死者と交信する能力を持っており、それをビジネスにもしてきたが、今はその力を封印して工場で働き、平凡な暮らしをしている。
3つ目はイギリスの双子の少年の話。
いつも一緒だった兄を事故で亡くした上、母親は元々ドラッグ中毒だったため、里親に出されることになってしまった。
この3人の共通点は「死」、そしてとても孤独だということ、でも懸命に生きているということ。
マリーは死後の世界にある意味とりつかれ、仕事も恋も失ってしまうけれど、その体験を出版するまでにこぎつける。
ジョージは淡々と暮らす中で出会ったメラニーのことを、結局は能力がばれてしまったことで失うけれど、自分を取り戻すために旅に出る。
少年マーカスは里親になじめないまま、兄に会いたいあまり、霊能者巡りに奔走する。
そういう様子を静かに丁寧に撮っている映画って感じ。
だから目が離せないし、彼らが感じているであろう感情がじわじわとこちらに伝わってくるので、とても痛みを感じた気がした。
そう、イーストウッド映画って、良くも...時に悪くもリアルで、とてもとても切ない痛みがあるんだよね。
最後にこの3人がロンドンのブックフェアで偶然出会う。
マーカスはジョージを通して兄からのメッセージを聞けた後、おそらくリハビリを終了した母親と再会し新しい日々が始まろうとしている。
ジョージはそんなマーカスのおせっかいで、マリーと再会し、こちらもおそらく...という思わせぶりな映像で終わる。
このぼやかし感がまた良くて。
孤独で冷たかった日々がどうか、どうか、少しでも誰かの温もりを感じられる日々になりますように...と思いながら、優しい気持ちで見終わることができたかな。
エンディングのイーストウッドの曲も良かったなー。
マット・デイモンは「インビクタス」からの続投だったけど、今回の役もとても良かった。
自分の能力が人を傷つけ、その結果自分も傷つけることに葛藤する姿、そしてその気持ちを実兄に全く理解してもらえない切なさが十分に伝わってきた。
マリー役のセシル・ドゥ・フランスも、美しくできる女が名声も恋人も失っていくという、弱さと強さのバランスをさらりと演じていたように思います。
切な顔のマーカス役の子も印象に残る。
さて、映画が始まる前に「津波のシーンがあります」という注意が促されていたけれど、その映像がリアルに感じられてとても怖かった。
当然東北の地震のことを思い出したわけだけど、津波の事故と言っても水に飲み込まれるだけでなく、流れの勢いでぶつかって...という被害もあるのかと身が震えるような気がしました。
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